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とりあえず書きたいことを。

カフェでジンジャーエールを頼めるようになったら大人だと思う

気づけばコーヒーも紅茶も飲めるようになっていた。紅茶はお茶の延長だから、飲めるようになる理屈はわかる。でもコーヒーはどうだ?別に甘くないし、のどごしよく飲めるかというとそんなことはない。冷静に考えたらコーラのほうがうまい。

 

それでもカフェに行くとコーヒーを頼む。夏だったらアイスカフェラテ。のどを湿らす程度に口に含み、飲む。カップを持ち上げたり置いたりする所作や、必要以上に甘くしないカフェラテを飲む姿に大人の余裕を垣間見た。早く大人の仲間入りをしたくて、カフェに行ってはコーヒーを頼んだ。

 

2年ぐらい前から、メニューにソフトドリンクがあることに気づいた。正確には、ソフトドリンクを置いているカフェがあることに気づいたのだ。じつはこれと同じようなことを20歳前後のときにもやっている。居酒屋にソフトドリンクを置いていることに気づいたときのことだ。思い込みは怖い。

 

はじめは、なんでカフェに来てまでソフトドリンクを頼むのか、不思議でならなかった。コンビニで500ml買ったほうが断然安い。いや、コーヒーもコンビニのほうが安いけど、カフェというのは空間を楽しむとか場所の提供という側面もあるから…と考えたところで衝撃の事実にぶち当たった。空間とか場所とか言い出したら、飲み物それ自体に価値はないということに。

 

それ以来、メニューの後ろに追いやられているソフトドリンクが気になって仕方がなくなった。

でも頼まなかった。なぜコーラに450円も払わなくてはいけないのか。コンビニでペットボトル3本買える。1.5L。ここではせいぜい350ml。差は歴然。場は厳然。

 

ジンジャーエールという飲み物がある。カナダドライが出しているものと、ウィルキンソンが出しているもの。大きく分けてこの2種類。味に違いがあり、俗に前者が甘口、後者が辛口と分類される。ファミレスのドリンクバーやコンビニで見かけるもののほとんどが甘口、つまりカナダドライのほうだ。ウィルキンソンはちょっといいコンビニ(成城石井とか)やちょっと雰囲気のいい飲み屋で飲める。そんな立ち位置の違いだ。

要するに、ウィルキンソンはどこにでもある飲み物ではない。

 

さて、カフェでソフトドリンクの話だが、よくよくメニューを見てみるとジンジャーエール(辛口)と書かれていた。全部のカフェがそうではないはずだが、僕がときどき利用するカフェではそうだった。上述したように、辛口は出会える確率が低い。そのくせ辛口のほうが美味しい。

ここで葛藤が生まれた。

カフェという大人の場でソフトドリンクという子供の飲み物を頼むこと、一方でなかなか飲めないウィルキンソンジンジャーエールをここなら飲めるということ。コーヒーならゆっくり飲めるが、ジンジャーエールだと秒で飲んでしまうこと…

 

ひとしきり考えた結果、ジンジャーエールを頼むことにした。

なぜ頼んだか?それは、コーヒーを難なく飲めるがあえて違う飲み物を選択することが、それこそが大人の余裕なのではないか、そう思ったからだ。

9割の客がコーヒーもしくはコーヒーに類する飲み物を飲んでいるなか、ジンジャーエールを飲む。その超然とした選択は、自分に芯がないと絶対にできない。若造は、雰囲気に飲まれエスプレッソを頼むはめになる、飲めないのに。ここでジンジャーエールを頼むやつは、エスプレッソだって飲める、モカだろうが紅茶だろうが問題ない。あえて、カフェという空間で、炭酸飲料を飲む。サイレントマジョリティでない、自分を持った大人になりたい。そう思って毅然とした態度で頼んだ。カフェで飲むジンジャーエールは、心なしか炭酸が強い気がした。洗礼だったのかもしれない。

 

隣のテーブルの子供が、炭酸を飲んでいる僕に気づきメニューをひっくり返しコーラを頼んだので、ソフトドリンクを飲んでいるやつ=子供という画が出来上がってしまった。僕は秒でジンジャーエールを飲んだ。